ミヒャエル・ハネケという映画監督がいます。
彼の映画を2,3本立て続けに見てハマってしまい、買ったはいいが長い間放置されていた「ミヒャエル・ハネケ DVD-BOX1」を先日やっと見終わりました。
"感情の氷河化3部作"とのこと。(なんだそりゃ。)
デビュー作から3本続けてみた感想としては、まずブレがないということ。
このDVD-BOXの購入に至るまでで、「隠された記憶」→「ファニーゲーム」→「タイム・オブ・ザ・ウルフ」と見てきたのですが、何を如何に描くかが一貫しており、作中を貫く緊張感の漂い方が同じような体験をもたらす。狂気と暴力の冷徹な気配に覆われている。
ストーリー上の意味としてのシーンが終了した後の余韻のようなロングカットが印象的で、構図や色味なども含め僕はこの監督の画の作り方がとても好きです。
しかしこの初期の尖った3作を見ると、僕が最初に見た最新作「隠された記憶」のレビューの中で散見された「過去の作品と比べるとちょっとヌルいんじゃない?」というのはわかる気がしました。「隠された記憶」にはストーリー性があり、若干のエンターテイメント性もある。なるほど、最初に「隠された記憶」を見ておいてよかったなぁ、なんて僕なんかは思ってしまいます。いきなりこの3作のテンションだと、それはそれで衝撃的だったかもしれないけれど、あるいはもう他の作品を手に取ろうと思わなかったかもしれないし。
ところで、このDVD BOXの購入に踏み切った大きな理由が各作品に監督の解説があるということで、実際にこれはすごく興味深いものでした。とくに印象に残ったのが「セブンス・コンチネント」についての解説に出てきた「リズム」という言葉。
以下インタビューの字幕抜粋
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こんな次第だ
この事件を物語ることの難しさは...
新聞で記事を読んだ
当然のことながら記者は事件をこと細かに説明していた
取材を重ね--
"父親は借金に苦しんでいた"とか
"妻と性的問題があった"とかくだらない説明だ
説明は... 卑小化する
行為の持つ力を
そういうことだ
最初はこれを従来の技法でどう描けばいいか悩んだが
とても単純なプロトコルを作ろうと考えついた
それがテーマに近づくための私のスタイルとなった
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映画に描かれる内容を人は知っている
どんなテーマでもいい ある話を語るなら--
すでにそれを読んでいる
ではいかにして--
観客の心のより深い部分に到達できるのか?
ひとつの可能性は"リズム"だ
映画とはリズムだから
私にとって映画は文学よりもっとずっと音楽に近い
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人々の潜在意識、無意識的な部分にリーチする手段としてのリズム・律動。直感的にとても納得させられました。
ところで、前々から話があった「ファニーゲーム」のハリウッドによるリメイク「Funny Games u.s.」。最初にこの話を知ったときは、あの映画をハリウッドでリメイクなんて...、と思っていたのですが、ハネケ本人によるリメイクということを知ってからは俄然興味津々で、そして気付けば今月20日からシネマライズで公開の予定です。
この作品はハネケ映画にハマるかどうかのリトマス試験紙みたいな作品だと僕は思っていて、けれどそのショッキングな内容上薦める人を非常に選びます。ヴィム・ヴェンダースはカンヌの上映会時に途中で席を立ったとかなんとか。
いやぁ、この映画を見るのにクリスマス以上にふさわしい日はありませんね。(笑)